2024年の「HELM MOTORSPORTS」はFIA-F4は、過去最多となる4台体制で挑む。新設されたチャンピオンクラスには、第2戦で悲願の初優勝を遂げた森山冬星、2021年のインディペンデントカップ王者で、挑戦を厭わぬHIROBONを擁す。そしてJAF地方選手権タイトルがかけられ、名称一新のインディペンデントクラスは、2022年のチャンピオン鳥羽豊が引き続き、さらにFIA-F4が本格レースデビューとなるSAKAI WILLIAMを加えた陣容になる。なお、今回はHIROBONが欠場。代わって出場するHO ETHANはロサンジェルス在住で、台湾出身の19歳。現在はUSF PRO 2000と呼ばれるフォーミュラカーレースに出場中で、FIA-F4にも2023年にサウスイーストアジア選手権の参戦経験を持ち、またマカオでは5位になったドライバーだ。
第3大会の舞台は、今季2回目の開催となる富士スピードウェイ。5月とは気候的なコンディションがあまりにも異なるため、そのままセッティングの流用はできないとはいえ、駆け引きや、どこがタイムアップのポイントかは十分に応用が効くはずだ。
計測史上、最も暑い7月とされたが、8月になってもそんな状況に変わりがあろうはずもなく、猛暑の中、木曜日からレースウィークが開始された。それぞれ日を追うごとにタイムを詰めていき、森山は1分46秒515をベストに、8番手ながらもトップからコンマ5秒と遅れず。何よりタイヤがピークを過ぎてからも、コンスタントにタイムを刻んでおり、これは決勝に向けた期待材料と言えそうだ。
鳥羽は木曜日こそ、本来のスピードを見せられずにいたが、金曜日の走行1回目には1分48秒268で、トップからコンマ03秒遅れの2番手に。そのセッションでWILLIAMも1分49秒064を記して9番手と、ついにトップ10圏内に食い込むまでとなった。一方、初参戦のEHTANも走り始めの1分48秒765から、最終的には1分48秒283にまで縮めていたが、まだまだ伸び代はありそうだ。
そして迎えた予選は、土曜日の7時45分にチャンピオンクラスから開始された。依然として暑いとはいえ、まだこんな時間で路面温度が上がりきっていないため、それぞれウォームアップは入念に行い、森山もETHANもアタックは計測4周目から。
1分46秒772、1分46秒585と、好タイムを連発して森山は、その時点での2番手に。さらに1周のクールダウンを挟んで、1分46秒108にまで縮めて暫定トップに躍り出る。続けて記録した1分46秒174をセカンドベストタイムにしたかと思われたが、その直後に1分45秒台に乗せたドライバーが! それでも諦めない森山は最後の最後に、セカンドベストタイムを1分46秒156まで縮めて意地を見せた。その結果、決勝には2戦とも2番手で臨むことになった。
一方、ETHANはじわりじわりとタイムを詰めていくも、しばしベストタイムが1分47秒171のまま。それでも森山同様、最後に1分47秒998 を出してきた。2戦とも20番手からのスタートながら、果たしてどこまで順位を上げるか注目される。
インディペンデントクラスでは、温度の状況を考慮して計測3周目からのアタックとなった。鳥羽はいきなり1分48秒511、1分48秒358と好タイムを連発してトップに立つも、2周ほどタイムが伸び悩んでいる間に、その座を奪われてしまう。それでも、終了間際に1分46秒269、1分46秒251を絞り出してきた結果、2戦ともにクラス4番手を獲得する。
WILLIAMはじわりじわりとタイムを詰めていく、いつものスタイル。計測7周目に1分50秒を切る、1分49秒658を出すと、次の周には1分49秒313にまで短縮する。そして、1周挟んでラストアタックでは1分49秒061にまで縮めてきた。惜しい! あと少しで1分48秒台突入だったのに。その結果、第5戦はクラス12番手、第6戦はクラス13番手で臨むことになった。
決勝レース第5戦のスタート進行開始は12時ちょうど。GTが走った直後で、路面にラバーが乗ってコンディションが変わっているのは予想できたが、温度のさらなる上昇によって予想以上だった感は強い。森山を含むフロントローのふたりは好スタートを切ったものの、その後方ではタイヤをうまく転がせず、スタートに出遅れる者も。1周目を終えた時点でトップは3台で競われるようになり、森山はトップにプレッシャーをかけつつ、後ろの動きも牽制しながら周回を重ねていく。
4周目にはトップと森山の差が1秒に広がった一方で、追いかけてくるのもひとりからふたり、そして3人に増えていく。だが、中盤の厳しい状況に耐え続けたことで終盤には安全圏へ。2戦連続の2位フィニッシュとなった。
一方、初レースのETHANにとっては我慢の戦いとなった。1周目にふたつポジションを上げて、18番手とするが、やがてインペンデントクラス勢にも囲まれてしまう。しかし、着実に周回を重ねた結果、チャンピオンクラスの17位を獲得。何より無傷での感想を果たせたことは、大いに評価に値しよう。
インディペンデントクラスでは、スタート直後の1コーナーで上位陣にアクシデントが発生し、早々に一台がリタイアしたことで、鳥羽は自動的に3番手に浮上する。6周目には2番手に上がり、残すはトップのみ。しかし、相手はストレートが速く、1コーナーでは抜けないと鳥羽は判断。様子をうかがいながら周回を重ねる中、勝負どころはダンロップコーナーと定め、チャンスが訪れたのは12周目だった。狙ったとおりのオーバーテイクができ、そのまま逃げ切るかと思われたが、最後にトラップが仕掛けられていた。
チャンピオンクラス勢のトラブルで撒かれたオイルに足を取られ、あわやスピンの一幕もあったが、急接近した後続も黄旗が振られていたため、抜くに抜けず。結果、コンマ4秒差ながら、辛くも逃げ切って鳥羽が今季初優勝を飾った。
一方、WILLIAMはスタートでストールして出遅れてしまい、1周目を終えた時点の順位は15位に。しかし、そこから先はバトルを繰り広げつつ、周回を重ねていた。しかし、その最中にはダンロップコーナーでの接触も。これがペナルティの対象となり、クラス15位でチェッカーを受けたが、10秒のタイム加算によって16位に降格となっていた。
僕のスタートは悪くなかったんですけど、途中のペースが気になりますね。序盤、終盤は良かったんですが、中盤に着いていけなくてつらかったです。途中のフィーリングが悪かったので、うまく走れなくて……。う〜ん、明日に向けて改善ですね、話し合って。明日も表彰台はマストなので、頑張りたいと思います。
みんなフェアなバトルしてくれて、向こう(アメリカ)のレースみたいにぶつけてくることがなく、レースとても楽しめました。ただ、僕のエンジンはちょっとストレートで調子が悪くて、回転も上がらなくて。それを直せば、明日はもっと戦えると思います。
前にいるのはトップだけとなって、徐々に追い詰める算段だったんですが、ストレートがブチ速いんですよ! バトルしながら1コーナーでは無理、100Rのラインが違うのでヘアピンも諦めて。次はB(ダンロップコーナー)だと。それでヘアピンでうまいこと合わせて、Bで何回か様子をうかがった後にインを刺して、思ったとおりのアタックできれいに抜くことができました。彼もクリーンだったし、寄せてきたりは何もなくて、お手本みたいなレースでした。でも、最終ラップでオイルが出ていて、スピンしそうなのを無理やりねじ込んで復帰したんですけど……。もう、最後ギリギリ。それでも勝てたので、楽しい、いいレースができました。明日もまた!
今日はバトルのすごい、いい練習になりました。実はスタート失敗しちゃって、エンストしているんですよ。それで順位を下げてしまったけど、追い上げる機会もできて、何より完走できたし、いいバトルができたので良かったです。
決勝レース第6戦のスタート進行開始は8時25分。上空には青空が広がっているが、太陽が真上まで上がっていないため、さすがにまだ茹だるほどの暑さではない。
スタートをそつなく決めた森山は、1コーナーにインから飛び込むも、しっかりガードを固められ、前に出られなかったばかりか、アウトからアプローチをかけていた予選3番手の車両にかわされてしまう。しかし、前を行く2台から少しも遅れず続いていく。その1周目には、最終コーナーで一台にインを刺され、4番手に後退。ただ、相手の立ち上がり加速は鈍っていたから、本来ならすぐ抜き返せたはず。できなかったのは、直後にセーフティカー(SC)が導入されたからである。
森山らが通過した直後のダンロップコーナーで接触があり、3台がストップしていたのだ。SCの先導は6周目まで続いた。リスタート後の上位陣はトレイン状態で、1周はそれぞれ様子見となったが、8周目からはそれぞれ動く。森山はコカコーラコーナーで抜かれていたが、次の周のダンロップコーナーでは2番手の車両が追突されてスピン。その脇をすり抜けて再び4番手に。さらに10周目のストレートではスリップストリームから抜け出し、3番手に浮上。そのまま2番手との差も詰めていく。
完全にテール・トゥ・ノーズ状態とした最終ラップ、コカコーラコーナーで森山が動く。だが、2番手の車両に並びかけ、前に出ようとした瞬間、縁石に乗ってしまって痛恨のスピン! 戦列に復帰はできたものの、11位でゴールするのがやっとだった。
一方、EATHANはダンロップコーナーでのアクシデントを回避でき、4ポジションアップとなる16番手で1周目を終了。今度はインディペンデントクラス勢に囲まれることなく、最後まで周回を重ねていった結果、13位での完走を果たしていた。
インディペンデントクラスでは、鳥羽が好スタートを切って、まず一台をパス。さらに1コーナーでももう一台を抜いて、もう残すはトップだけとなっていた。相手のストレートの速さは、第5戦でもう理解していたから、早めに仕掛けようと決めていたのだが……。
そこに件の、ダンロップコーナーでのアクシデントである。抜こうとした直後に、目の前に止まった車両がいたからたまらない。咄嗟の対応で回避しようとしたが、そこにもまた止まった車両が。これでフロントウィングを痛め、万事休す。SCラン中は、そのまま周回していた鳥羽だったが、リスタート後は着いていけず、1周してピットに戻ってリタイアとなった。
WILLIAMは無難にスタートをこなし、まずはポジションキープでレースを開始するも、6周目のダンロップコーナーで接触され、順位を落とす不運が。それでも先行する車両の後退もあって、やがて13番手にまで上がり、12周目には自力でオーバーテイクにも成功。あと一歩でのところでポイント獲得とはならなかったものの、12位での完走を果たしていた。
優勝できると思っていたのがいっちゃって、本当にチームには申し訳ないです。昨日よりマシになったんですけど、キツくても耐えに耐えて、自分の順位も上がって、後半のペースも良かったのに……。攻めるべき場所が違いましたね、判断ミスでした。縁石で跳ねて制御不能になって、スピンしちゃったんです。ヘアピンだったり、ダンロップコーナーだったり、ブレーキングポイントでトライすれば良かったと思います。次の鈴鹿では、もう2連勝するしかないと思っているので、しっかりチームと、もう時間少ないですけど、すぐやる感じで頑張りたいと思います。
昨日よりも今日のレースは良くて、タイムも自己ベストを出すことができましたし、レース中は前のスリップストリームを使うのが難しかったけど、今後はそれを意識して、もっと前に行けるようにしたいと思います。今後のことは、いろいろ計画中です。
スタートはすごく決まって、1コーナーまでに2番手に立ったんです。あとはトップを追いかかるばかりだなと思いながら、Bコーナーに向かっていって、向こうがインに入ったので、僕はアウトから被せていこうと思ったら、目の前で2台がクラッシュしていて、『あ、やばい』と思って右に避けていったんですけど、その先にも1台いて。本当にイン回りして細い道通っていった人以外は、どうしようもないタイミングで当たっちゃいました。『1周目のBコーナーって混乱するぞ、だから抜きに行っても先を見なきゃいけない』って習慣をつけていかないと、また同じミスをやっちゃうので。いい反省として次は次で、また頑張ります。次は鈴鹿なので、リベンジしなきゃいけないし!
今日は昨日よりスタートが、まぁまぁ悪くなくて、そのまんま、みんなに着いていって。でも、Bコーナーで当てられて順位を落としちゃったんですが、ちょっと挽回できて、無事完走できました。今回はペースも前の富士より上げられたので、順位も上げられるようになって。僕、予選は12番手で、トップと1秒差ぐらいなので、もうちょい各コーナー、コンマ1秒とか上げていけば、たぶん真ん中から上の方に行けると思うので、次の鈴鹿は頑張ります。
2か月のインターバルで、テストはかなりやりました。行けるところは行こうという感じで。冬星の予選2番手というのはすごく良かったと思いますが、レースペースは苦しくて。レースウィーク通じて、表彰台乗れたらベストだな、という状態ではありました。昨日が2位で、今日もその可能性はありましたが、最後スピンしちゃったのは一個でもポジション上げようとやったことなので、チャレンジなので僕は仕方ないと思っています。チャンピオンシップ的にも、まだまだ先は長いので大丈夫かなと思っています。
鳥羽さんは昨日勝ってくれましたが、今日は若手のクラッシュに巻き込まれて、避けきれなくて。ペース良かったんですけどね。練習では苦労していましたが、車に慣れてくれば、パフォーマンスはやっぱり高いですね。
WILLIAMさんは2戦とも追突がありましたが、レースには慣れてきたかなという気がします。予選ではまだ出しきれなかったりはしますけど、タイムもどんどん早くなってきているので、今後も練習をしっかりやれば、もっと速くなると思います。
ETHANは日本で初めてのレースでしたが、この気温と日本のグリップする路面、このF4にまだ慣れなかったということ、まだまだドライバーのレベル的には高いところ目指さなきゃいけない、みたいな感じにはなっています。来年、フル参戦したいということなので、今年はスポットで出るかもしれません。
HIROBONさんは、次からまた出ます。
次回のFIA-F4、そしてSUPER GTは、8月31日〜9月1日に鈴鹿サーキットで開催されます。第5戦で森山選手が今季3度目の表彰台に立ち、鳥羽選手も今季初優勝。こと、鳥羽選手は十分2連勝の可能性もありましたが、不運なアクシデントで涙を飲むことに。森山選手も攻めの姿勢を、第6戦でも見せてくれました。結果は悔しいでしょうが、その思いは必ず今後の糧になるはずです。WILLIAM選手も速さが増してきました。練習走行ではトップ10に入れるようになってきたので、予選や決勝でも発揮できれば、きっとコンスタントに入賞できるようになるはずです。またETHAN選手は初めて尽くしのレースとなり、条件としては最も厳しい戦いを強いられたかもしれません。日本でのレース活動にも、あらためて意欲を見せていますので、これからにご期待ください。今、HELM MOTORSPORTSの一体感は、最高潮にも近い状態です。必ず揃って結果を出してくれるはずなので、これからも応援よろしくお願いします。
FIA-F4
ROUND 5&6QF
COMMENTS
TOSEI
昨日までチームは順位を全然気にしていなかったんですが、僕は気にしていて。マシンのフィーリングは最後の方になればなるほど、乗りやすくなっていたので、不安といえば不安でしたが、この結果は目に見えていました。2番、2番で悔しいです、最近ずっと2番なので。決勝でやり返したいと思っているので、しっかりどう戦うか考えて、マシンもエンジニアとしっかり決めて、決勝を頑張りたいです。
ETHAN
アメリカのレースより難しい。思ったようにタイムを出せませんでした。この予選での反省点を、決勝に生かしたいと思います。
YUTAKA
昨日の練習の後に、大きくセットアップを変えて、ニュータイヤで走るので『これぐらいでいいかな』と臨んだんですが、アンダーオーバーなイメージが特に100Rとヘアピンで消せなくて、そこでタイム落としちゃっている感じです。それ以外は、自分なりにいい感じで行けているというか、セクター3なんかほぼパーフェクトで。GRスープラコーナーでのアクセルオンが、ちょっとだけ遅いかなって感じだったんですけどね。この後、レースで勝てるセットアップに変えて、それで臨みたいと思います。課題は明確なので、頑張ります。
WILLIAM
いちばん最後に出せましたが、もうちょっと早くに出していれば! 49秒フラットが出せたので、もうちょっとでしたね。少しまた富士に慣れつつという感じなので、レース、頑張ってきます。