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HELM MAGAZINE

INTERVIEW

「人と違う方へ行く」 株式会社アロウズ 新井達夫代表と平木兄弟が語る 挑戦でつながった6年

【Human of HELM オフィシャルスポンサー・インタビュー】

白いボディに赤いラインをまとったダンプが、茨城の街でひときわ目を引く。

その車両を走らせる株式会社アロウズは、建材業を原点に、総合建設業、建設資材販売、運送、産業廃棄物の中間処理へと事業を広げてきた。建設業の従来のイメージにとらわれない車両やオフィスのデザインにも、新井達夫代表の「人と同じことはしない」という考えが表れている。

2020年、HELM MOTORSPORTSを立ち上げたばかりの平木兄弟から、新井代表のもとへ一通のダイレクトメッセージが届いた。

コロナ禍で思うような営業活動もできなかったチームにとって、知人の紹介を介さず、まったく面識のないところから支援の話へとつながった最初の企業だった。

初対面から、支援を決めるまで約15分。

なぜ新井代表は、実績も関係性もまだ十分ではなかった若いレーシングチームを信じたのか。出会いから6年余り。新井代表とHELM MOTORSPORTSドライバーの平木湧也、平木玲次がモータースポーツへの思い、挑戦することの意味、スポンサーとチームの関係、そしてHELMに託す期待について対談した。


建材業から建設、資源循環へ。「業界のイメージを変えたかった」

——まず、株式会社アロウズがどのような会社なのか教えてください。

新井代表: もともとは父の代に始まった建材業です。分かりやすく言えば、ダンプ屋ですね。

そこから建設業を始めて、今は産業廃棄物の中間処理場もやっています。まったく関係のない分野へ広げていったというより、これまでやってきた仕事に関連する事業を、少しずつ増やしてきた会社です。

——街中でアロウズさんのダンプを見かけると、白い車体に赤いラインが入っていて、すぐに分かります。一般的な建設会社とは少し違う印象がありますね。

新井代表: この業界のイメージを変えないといけない、という思いは何年も前からありました。ただ、当時は日々の仕事でいっぱいいっぱいで、そこまで手をつける余裕がありませんでした。令和になって社名をアロウズへ変えるタイミングで、車両も含めて全部変えました。白に赤いラインを入れたカラーリングは、昔好きだったF1マシンのデザインを少しヒントにしています。街中でも見つけやすいでしょう(笑)。

——オフィスも、いわゆる建設会社の事務所という雰囲気を感じないモダンな作りですね。

新井代表: そこも、従来の建設業のイメージをなくしたいという思いがありました。ワンフロアなので、どこに誰がいるかも分かります。外から見た人に「建設会社っぽくない」と言われることもありますが、それでいいと思っています。ずっと同じ見せ方、同じやり方をしていたら、何も変わらないですから。


一本のDMと、約15分の即決。HELMとの始まり

——HELM MOTORSPORTSとアロウズの出会いは、2020年

平木湧也: 僕たちがチームを立ち上げた時期とコロナ禍がちょうど重なっていました。なかなか企業訪問や営業活動ができない中で、私たちから新井社長へ一方的にダイレクトメールを送らせていただきました。それまでまったく面識はありませんでした。知り合いの紹介でもなく、何の接点もないところからご連絡して、実際にお会いすることになった最初の企業がアロウズさんでした。

新井代表: 気まぐれだからね(笑)。DMを見て、電話して「一回来てほしい」と言いました。

——なぜ、その段階で会ってみようと思ったのでしょうか。
新井代表: ちょうど当社も、いろいろなものを変えようとしていた時期でした。社名を変えたり、会社の見せ方を変えたりしていた頃でした。もともとレースも好きでしたし、地元の若い二人が自分たちでレーシングチームを立ち上げると聞き興味を持ちました。いろいろなタイミングが合ったのでしょうね。

——モータースポーツに限らず、企業やスポーツ団体から支援の相談を受けることはほかにもあったのではないですか。
新井代表: 地元の有名なスポーツチームなどからお話をいただくこともありました。でも、そういうところにはすでにたくさんのスポンサーさんがいらっしゃるでしょ。そこに当社が加わったとしても、ホームページを見た人が特別何かを感じるかというと、そうではないと思ったのです。誰もが応援するところを、自分まで同じように応援する必要はない。それよりも、地元で何かを始めようとしている若い人たちを応援する方が自分としては面白いと感じました。

——初めて二人に会った時は、どのような印象でしたか。
新井代表: 若くしてレーシングチームを立ち上げるということ自体が、すごくいいと思いました。今は、どこかの会社に入って、合わなければまた別の会社へ移る、という選択もできます。それが悪いわけではありませんが、自分たちで何かを始めようとする若い人は、そんなに多くないですよね。だから、レースだからということだけではなく、これは応援するべきだと思いました。あとは、応援したらいつかF1に連れていってもらえるのかな、とも思いましたけどね(笑)。

——最初に訪問したその場で、支援を決めてくださったそうですね。
湧也: そうだったんです。実際にお話ししたのは15分くらいだったと思います。その場で「応援するよ」と言っていただきました。
新井代表: 多分、来てもらう前から気持ちは決まっていたのでしょうね。何も感じていなかったら、そもそも電話して呼んでいないですから(笑)


筑波を走った20代、鈴鹿の1コーナーで見たF1

——新井代表がモータースポーツを好きになったきっかけは、何だったのでしょうか。
新井代表: 若い頃はバイクに乗っていました。筑波サーキットも走りましたよ。入院もしましたけどね(笑)。本当は四輪もやってみたかったのですが、車はお金がかかるので、個人ではなかなかできませんでした。仕事もありましたし、結局は中途半端なところで終わってしまいました。

——F1も長くご覧になっているそうですね。
新井代表: 鈴鹿で初めてF1日本グランプリが開催された時も、友人たちと見に行きました。1コーナーで観戦したのですが、当時は芝生の自由席でした。今とは全然違いますよね。それからずっとF1は見ていますし、今でも毎年見に行っています。

——モータースポーツのどんなところに魅力を感じますか。
新井代表: 速さもそうですし、普段の生活では見られない景色がありますよね。才能のある人たちが、本気で頑張っている姿を見るのも好きなのだと思います。自分はバイクや車を少しかじっただけで終わってしまったけれど、レーシングチームはそれをプロとしてやっている。自分ができなかったことを本気でやっている方々なので、そこに少し乗っかりたいという気持ちもありますね(笑)。走っている姿を見るのも好きですし、頑張っている人を応援することも好きなんだと思います。


「レーシングカーに会社のロゴが入る」夢が現実になった日

——初めてHELMのレーシングカーにアロウズのロゴが入った時は、どのような気持ちでしたか。
新井代表: 感動しましたね。ずっとモータースポーツが好きだったので、当社のロゴがレーシングカーに入るなんて、夢みたいな話じゃないですか。本当に嬉しかったです。

——見る側から支援する側になり、モータースポーツの見え方は変わりましたか。
新井代表: もともとずっと好きだったので、考え方が大きく変わったということはありません。ただ、近くで見られるようになったことは大きいですよね。普段は柔らかい雰囲気でも、レースが始まるとみんなの表情が変わる。チームが現場でどのように動いているのかも見えるようになりました。二人の走りを応援することはもちろんのこと、地元のチームを応援できているのもいいですよね。自分も楽しませてもらっています。

——アロウズさんの社内でも、モータースポーツやHELMへの関心は広がっていますか。

新井代表: 最初は関心があったのは私だけでしたね(笑)。今の若い人たちは、僕たちの世代ほど車そのものに強い興味を持っていないのではないかなと感じています。昔は、いい車に乗りたいから頑張って働く、という人も多かったのですけどね。今は車を移動手段として考える人も多いでしょう。でも、会社にポスターを貼っていると、社員や取引先の方から「HELMを応援しているんですか」「このチーム知っています」と声をかけてもらうことが少しずつ増えてきました。そうやって関心を持つ人が増えていくことは、会社にとっても非常に良いことだと思います。


「安全牌では上に行けない」。互いに学んだ6年間

——平木兄弟にとって、新井代表はどのような存在ですか。
湧也: 僕たちもこれまで、いろいろな企業を訪問させていただきました。支援を決めてくださる企業でも、一度社内へ持ち帰り、後日ご連絡をいただくことがほとんどです。お伺いしたその日の、その場で「応援する」と言ってくださったのは、新井社長だけでした。僕たちにとっては、本当に男気のある方です。
新井代表: 適当なだけかもしれないよ(笑)。
湧也: いえいえ、違います(笑)。あのタイミングで決断してくださったことは、今でも強く覚えています。

——玲次選手は、新井代表との付き合いの中で感じていることはありますか。
玲次: 新井社長から学ばせていただくことは、たくさんあります。特に印象に残っているのが、「他と同じことをしない」「自分がいいと思ったことはやる」という考え方です。会社のロゴや車両のカラーリング、オフィスもそうですが、一般的な建設会社の形に合わせるのではなく、自分たちの考えを形にしていますよね。僕たちもチームを立ち上げる時に、「ドライバーがチームをつくるのは無理だ」「やらない方がいい」と、様々な意見をいただきました。それでも湧也と二人で挑戦したかったですし、ドライバーとして走るだけではなく、チームを運営することで成長できると思って始めました。そういう部分は、新井社長の考え方とつながっていると感じます。

——新井代表は、周囲から反対された時には、どう判断されますか。
新井代表: 世間の意見というのは、基本的に安全牌なんです。安全な方ばかり選んでいたら、成長できません。少し背伸びをして、人と違う方へ行く。そうすれば失敗することもありますが、自分で失敗したことは絶対に忘れません。人から「あれはやらない方がいい」と聞いただけでは、本当の意味では分かっていないんです。自分でやって失敗すれば、次は同じことをしなくなる。その積み重ねが人を強くすると思います。ただ、何の根拠もなく無謀なことをすればいいわけではありません。現実的な裏付けは必要です。裏付けがないなら、自分で努力してつくる。挑戦するためには、それだけの苦労もしないといけないと思います。

——自分をあえて追い込むようなこともありますか。
新井代表: ありますね。ここまでやってしまったら、もう後には引けないでしょう(笑)次へ進むためには、自分を少し追い込むことも必要です。でも、目標があるから苦労できるんですよ。何もないのに、ただ頑張り続けるのは難しい。あそこまで行きたいという目標があるから、人より苦労することができるのだと思います。


「頑張る」だけではなく、結果で楽しませてほしい

——これからのHELM MOTORSPORTSに、どのようなことを期待していますか。
新井代表: 人より目立ってもらわないとね。炎上して、という意味じゃないですよ(笑)。やっぱり一番は結果です。世間では「結果がすべてではない」とよく言いますが、結果もすべてだと思っています。レースは速くなるため、勝つために努力するものですから。ただ頑張るだけではダメでしょう。良くするために頑張る。優勝するために頑張る。結果が出てこそ、応援する側も一緒に楽しめるのだと思います。

——HELMとして、アロウズさんをはじめとしたスポンサーの皆さんに、どのようなものを届けたいですか。
湧也: 茨城を拠点に、全国のレースを戦っているチームは多くありません。地元・茨城のチームが全国の舞台で優勝する、チャンピオンを獲るということには、大きな意味があると思っています。レースはドライバーが注目されやすいスポーツですが、実際に一台の車を走らせるためには、メカニックやエンジニアをはじめ、多くのスタッフが必要です。そして、その活動を続けるためには、スポンサーの皆さんの支援が欠かせません。本当の意味で、レースはチームスポーツだと思っています。一つひとつのレースに、いろいろなストーリーや喜怒哀楽があります。スポンサーの皆さんの気持ちも乗せて走り、いい時も苦しい時も含めて、結果や感動を共有したい。それが僕たちの目指しているところです。
新井代表: 結果が悪くて楽しい、ということはないですからね(笑)。もちろん、いつも順調なわけではありません。なかなか結果が出ない時もある。でも、そこで腹をくくって、もう一段上へ行かないといけない。焦る必要はないと思います。ただ、止まってしまってはいけないですよね。

——新井代表から見て、今のHELM MOTORSPORTSの魅力はどこにありますか。
新井代表: チームの雰囲気がいいですよね。スタッフも若いですし、好きなことを仕事にしているから、みんな生き生きしている。新しく入ったスタッフに「大変じゃないのか」と聞いても、「楽しいです」と答えるんです。言わされているんじゃないかと思って、あとでもう一度聞きますけどね(笑)。それでも「楽しい」と言う。好きなことができるというのは、一番いいことだと思います。ただ、楽しさを続けるためには、努力も結果も必要です。その両方を大事にしてほしいですね。

——最後に、HELM MOTORSPORTSと平木兄弟へメッセージをお願いします。
新井代表: とにかく楽しませてください。それに尽きます。結果が出て、チームが強くなり、有名になれば、アロウズにとってもいい影響があります。「あのチームを応援している会社なんだ」と知ってもらえるようになる。社員や取引先の人たちも一緒に応援して、みんなで楽しめるようになったら一番いいですよね。だから、楽しませてください。

湧也・玲次: 頑張ります!


編集後記

「経営のポリシーなんてないよ」と笑いながら話し始めた新井代表。しかし、その言葉を追っていくと、一貫した考えが見えてきました。

人と同じ道を選ばないこと。若い挑戦者を信じること。失敗を恐れず、ただし無謀にはならず、努力によって挑戦の裏付けをつくること。そして、楽しさを続けるために結果を求めること。

白と赤のダンプカー、新たなオフィス、資源循環への事業拡大、そしてチーム設立から続くHELM MOTORSPORTSへの支援。そのすべてが、新井代表の「人と違う方へ行く」という姿勢から生まれていました。

HELMにとって株式会社アロウズは、マシンにロゴを掲げるスポンサーというだけではありません。最も早い時期にチームの可能性を信じ、厳しい言葉も笑いも交えながら、長い時間をともに歩いてきた伴走者です。

「楽しませてください」

その短い言葉に込められていたのは、単なる結果への要求ではなく、これから先も一緒に戦い、一緒に喜びたいという、6年分の信頼と期待でした。