チーム結成から5年目、節目のシーズンを迎える「HELM MOTORSPORTS」は、新たなステージに挑む。国内最高峰レース「SUPER GT」のGT300クラスに、NISMOのオフィシャルパートナーチームとして活動することになった。
これにともない、第1ドライバーにGT500クラスで2度のタイトル獲得経験を持つ、平手晃平を招聘。チーム代表である平木湧也、そして平木玲次の3人でシーズンを戦っていく。併せて、監督には福山英朗が就任。アジア人として初めてNASCARに参戦し、またNISSAN車で数多くの優勝、タイトルを獲得してきた経験を、采配に活かしていく。
マシンはもちろん、レースで勝つための車、NISSAN GT-R NISMO GT3で、信頼と実績のタイヤ、横浜ゴムとの強力なパッケージで優勝、そしてシリーズチャンピオンを目指す。
シリーズは全8戦で競われ、岡山国際サーキットを舞台とする開幕戦は、300kmレースとして開催される。今年SUPER GTは持ち込みのタイヤセット数減、また予選システムの大幅な変更など改革のシーズンでもあるが、新チームにとっては既存のチームとの差を詰める、またとない機会にもなりそうだ。初戦とはいえ、高い志で臨んでいく。
SUPER GTでは決勝日の午前中に走行がなく、決勝レースのスタート進行中に20分のウォームアップ走行が設定されているのみ。予選後に大きなセット変更を行った「HELM MOTORSPORTS GT-R」は、この20分という短い間にマシンの感触を確認しなければならない。各チームが決勝に向けてどのような状態でこのセッションを走っているのか、同条件ではないものの、この20分のセッションでクラス8番手のタイムを記録する。
一日の中で太陽もいちばん高い位置を過ぎ、気温は26度、路面温度は42度を示す中、いよいよ82周にわたる決勝レースがスタートを迎えた。スタートドライバーは平手が担当。集団の中でアクシデントに巻き込まれやすい位置だが、経験豊富な平手は危なげなく1コーナーをクリアすると、オープニングラップではひとつポジションアップの19番手に浮上。コース上でGT500クラス、GT300クラスそれぞれに接触アクシデントが発生していたことから、レースはスタート早々にセーフティカー(SC)が入ることとなった。
SCが隊列を離れてレースが再開したのは8周目。平手はここから着実に周回を重ね、前を走るTOYOTA GR Supraの25号車を追い詰めていく。ただしオーバーテイクするだけのラップタイム差はなく、25号車に引っかかる形で数周が展開。34周を終えるところでピットに向かいドライバー交代とタイヤ交換を行った。
ピット作業もまずまずのタイムで、実質の順位はそれほど落とすことなく後半スティントに突入。ステアリングを託された平木湧也は、目の前を走るLEXUS RC F GT3の50号車を追いかけていった。終盤、じわじわと50号車に近づいていく平木湧也。最終ラップではその差が0.3秒を切るところまで近づいたが、惜しくも並びかけるより前にチェッカーフラッグが振られてしまい、オーバーテイクならず。最後は悔しいバトルで終わってしまったが、SUPER GTデビューレースを18位完走という結果で終えることができた。
開幕前のテストとは大きく異なるコンディションの中、コンパクトなレイアウトでアクシデントも発生しやすい岡山での初戦を、「HELM MOTORSPORTS GT-R」は無事に最後まで走り切った。
SUPER GT
ROUND 1RACE
COMMENTS
KOHEI
僕にとってはチームを移籍して臨む初戦、そしてチームにとってはSUPER GTに挑む初戦となる岡山を、無事に終えることができました。今回はまずは完走することを目標にやってきましたが、予選・決勝のパフォーマンスをきちんと確認できましたし、収穫の多い開幕戦になったと思います。同じGT-R、ヨコハマタイヤというパッケージを持つライバルとの差も分かりました。予選後に大きくセット変更した結果、ウォームアップ走行の段階でクルマのセットがいい方向に進んでいたことは実感できて、ようやくスタートラインに立てたなと感じました。ここからまたどんどんアジャストしていき、次戦の富士ではもっといいパフォーマンスでまわりと戦えるようにしていきたいですね。
YUYA
最後、50号車は抜きたかったですね。ペース的には自分たちのほうが速そうだったのですが、GT300のトップ車両からは周回遅れになっていましたし、そういう他の車両を先行させないといけないタイミングでうまくギャップを広げられてしまったりして、最後にチャンスをつかみきれませんでした。ここまでのテストが雨がらみだったり、気温も低かったりしてドライコンディションで満足にマイレージを稼ぐことができておらず、こんなに気温が高く、タイヤが発動する状態で走ったのは今回の公式練習が初めて、という状況でした。そんな中でクルマのバランスも想定と違っていたので、予選後にかなり大きなセット変更をしましたが、それはいい方向に進んでいたと思います。ただ根本的にはまだ遅いので、そこをまとめられればもう少しいい形にはできるかなと感じました。まずはなんとか無事に1レースを終えられたというのが正直な感想です。今回の目標は完走することだとみんなと話していましたが、終わってみると悔しい気持ちにもなれました。この悔しさを力にして、次戦はよりいいレースをしたいと思います。
HIDEO
予選後に大きくセット変更をするのは、決勝前に十分な練習時間の取れないSUPER GTでは賭けのようなものでしたが、クルマの状況は良くなったようです。ようやくまわりと戦えるかな、というところまでは上がってきました。ただ、これだけ高い路面温度でのフルタンクでの走行などはテストではできていませんでしたから、きちんとコンディションに合わせきることはなかなか難しかったです。とはいえ初戦を無事に最後まで走り切ったことでデータは得られましたし、何よりもチームのみんなが悔しいという気持ちを持てたことが大きな収穫です。これを糧にどんどん成長を続けていきたいですね。