

「HELM MOTORSPORTS」は、国内最高峰レースである「SUPER GT」のGT300クラスに、NISMOのオフィシャルパートナーチームとして引き続き挑む。2シーズン目となる、2025年は体制を一部変更。チーム代表である平木湧也が第1ドライバーを務め、第2ドライバーに平木玲次が昇格。2021年以来の“純”兄弟コンビで望むことになった。監督として引き続き福山英朗が采配を揮う。
マシンはもちろん、レースで勝つための車、NISSAN GT-R NISMO GT3で、信頼と実績のタイヤ、横浜ゴムとの強力なパッケージで全8戦を戦っていく。
第3戦は久々の海外戦。2013年以来となるマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットが舞台となる。最終コーナーを挟んで2本のストレートが特徴的なレイアウトであり、その後には低速から高速まで多彩なコーナーが続く。何より東南アジア特有のスコールに見舞われた時の、急激な路面状態の変化にどう対処するかも、勝敗の鍵を握るだろう。
HELM MOTORSPORTSとしては初めて臨むサーキットながら、12年もの月日が経っていては、過去にレース経験があるチームとも、そう大きなハンデはないはずだ。むしろ無垢な状態で挑むことで見つけた発見が、好結果を生む可能性も十分ある。ここまでの2戦、岡山国際サーキットの開幕戦では19位、そして富士スピードウェイの第2戦ではSUPER GT参戦から初めてのリタイアを喫し、満足のいく内容とはなっていないものの、だからこそ結果に対する渇望感は今までになく高まっている。サクセスウェイトに苦しめられていない強みを活かして欲しい。なお、今回のレースは300kmで競われる。
一夜明けたマレーシア・セパンサーキットには、実に12年ぶりとなるSUPER GT開催に多くのレースファンが詰めかけた。今大会ではグランドスタンド裏で「日本祭り」と題したイベントも開催。東南アジアでは日本車のチューニングカーが人気で、さまざまなチューニング車両が展示されたり、日本食の屋台なども出ていたりしたことから、国内大会同様にサーキット全体で、SUPER GTというイベントを楽しんでいる様子がうかがえた。
1日で最も日差しが強くなる時間帯だったにもかかわらずピットウォークも盛況で、ドライバー、監督ともに地元ファンからの熱い声援を受け、この後に迫る決勝レースに向けてコンセントレーションを高めていく。
国内でのレースと異なり、マレーシア国歌と君が代が流れ、いよいよ決勝レースがスタートした。HELM MOTORSPORTS GT-Rは平木玲次が第1スティントを担当。スタートダッシュを決めるとターン3を抜ける頃にはすでに2~3台をパスし、オープニングラップで14番手に上がる活躍に、ピットも大いに盛り上がる。さらに、6周目には前を行く1台を、9周目にはさらにもう1台をかわし、12番手までポジションを押し上げた。
16周を過ぎるあたりからピット作業に向かう車両も出始めるが、HELM MOTORSPORTS GT-Rは見た目上で6番手まで上がった、20周目に平木湧也に交代。ターゲットにしていたライバル車両の前に出られることを狙ったタイミングだったものの、アウトラップでわずかに遅れを取り、逆転はならず。それでも全車がピットインを終えた27周目には、平木玲次が追い上げた12番手までポジションを取り戻すことに成功していた。
ここからは、1秒を切るギャップの中で前後の車両に挟まれる接近戦にもなったが、平木湧也は高い集中力で走行。28周目には11番手の車両がスピンアウトで後退し、ひとつ順位を上げると、トップ10フィニッシュを目指してひとつ前の車両を追いかけた。奇しくも10番手を走るのは、同じNISSAN GT-R NISMO GT3。同じパッケージングとして負けられない戦いであるうえに、29周目を走行中に、そのライバルに10秒のタイム加算ペナルティが掲示される。つまり、HELM MOTORSPORTS GT-Rは10番手のライバルに対し10秒以内のギャップでゴールすれば、トップ10フィニッシュを果たすことができるのだ。
この時点で2台の差は5秒9だったが、平木湧也の懸命なプッシュでその差が4秒に縮まる。いったんは7秒近くに広がるも終盤に再びプッシュをかけ、ファイナルラップに差し掛かるころにはついに2秒に。目の前にトップ10フィニッシュが近づき、平木湧也も最後のエネルギーを振り絞るが、最終コーナーに入る手前でGT500のトップ車両にかわされてしまい、この周でチェッカーフラッグを受けることに……。追いかけていたライバルはGT500トップ車両よりも前にコントロールラインを通過していたため、さらに1周を回ってゴール。周回数で差がついた結果、HELM MOTORSPORTS GT-R は11位という結果になった。
あと一歩でトップ10フィニッシュは逃したものの、数々のオーバーテイクショーと、最後まで粘り強くライバルを追い上げていく走りで今シーズン初ポイントを獲得。前2戦をはるかに上回る手応えを得て次戦、真夏の富士大会へと挑む。
もともと予定していた範囲の中で考えると、少し早めのピットインタイミングだったのですが、狙っていた車両を押さえるにはここしかないと判断して、20周目のピットインを決めました。実際はウォームアップの点で相手に分があり、タイヤ交換後にかわされてしまったので残念だったし、結果的には(ピットインのタイミングを)引っ張れば良かったのかなとも思っています。ロングスティントになるので、最初にある程度プッシュした後はタイヤのことも考えながら、中盤はセーブの走りになりました。残り10周はプッシュしようと決めて頑張って、いい感じに前に追いついていたのは良かったです。最後にGT500車両が間に入ってしまったことで10位には届かなかったですが、今シーズンようやくきちんとレースを組み立てることができましたし、ちゃんと戦えばこういった位置にいられるということを結果で示せたのはチームの自信につながると考えています。このレースをいい流れにつなげて、次戦も頑張ります。
予選でうまくいかなかった原因が分かった時点で、自分たちの実力はこのポジションではないと考えてレースに臨むことができました。事実、決勝ではスタートして序盤からどんどん追い上げていくことができましたし、まわりのラップタイムが落ちてくる中、僕はタイムを維持することができていたので、淡々と走る中で1台ずつ抜いて行くことができました。後半スティントも頑張ってくれて、最後にGT500車両が間に入ってしまったのは想定外でしたが、初めての海外戦をいい内容で終えることができて良かったです。順位には満足していませんが、内容には満足しています。こういったレースを積み上げていければ、必ず上位に行けると信じて、次戦以降も頑張っていきます。
SUPER GT参戦2年目、厳しい戦いが2戦続きましたが、今回は去年以上のレースができたと思っています。ドライバーふたりとも、チームも、最後まで振り絞ってよくやってくれました。最後、10位に届かなかったのは残念ですが、タイムペナルティを加味したギャップを計算して終わるのではなく、最後まで追い詰めてゴールしたいという思いがあって、プッシュし続けました。本当に、一人前のレースができました。我々のチームは、ともすれば育ちのいいチームのように思われがちですが、野武士のような底力も持っている。そんな姿を見せることができたのではないでしょうか。次戦の富士は大きくフォーマットが変わりますが、そんな中でも自分たちらしい戦いをしていきたいと思います。
SUPER GT
ROUND 3QF
COMMENTS
YUYA
2回目の公式練習では11番手につけていて、クルマの仕上がりとしても悪くないし、まだまだタイムを上げられそうだねとチームで話していたのですが、実際に予選を走った時には、その感触がまったくなく、クルマの雰囲気も正反対のようになってしまっていました。サポートレースがあったことで、路面コンディションの変化もあったと思います。残念ですが、気持ちを切り替えてレースに向かいたいと思います。タイヤをいたわりながらレースをマネジメントしていく必要があるので、まわりに惑わされることなく、自分たちの戦い方を崩さずに走っていきたいですね。まずはポイント獲得を目指します。
REIJI
サーキットサファリのタイミングなどで走りましたが、感触は良かったです。ただ、自分が走っている短い時間の中でも、路面状況が変わっていくのを感じていて、それがセパンの特性なのかどうかは理解しきれてはいませんが、難しいなと思いました。予選結果は残念ですが、いつもよりも練習時間が長かった分、自分たちのクルマの方向性も少し見えてきたので、あまりネガティブにはなっていません。どんなレースになるか予想もつきませんが、自分たちとしては無理なく確実なレースを戦うことが目標です。開幕から2戦、いいレースができていないので、流れを変えるレースがしたいですね。
HIDEO
予選日午前中の走行が終わった時点では、ギリギリQ2に進めるかなと思っていました。ドライバーたちも、もう少しタイムを削れるだろうと言っていたし、それは事実だったと思います。路面状況も変わり、セッションごとにタイムが1秒上がっていくという中で、その変化に合わなかった部分もあったでしょう。残念ですが、ドライバーもメカニックたちも精いっぱい頑張った結果なので、明日の決勝は切り替えてやっていきたいですね。